遺言書について
遺言書について
遺言書の必要性
相続が起きたときの一番悲しい出来事は、残された相続人である妻や子供たちの間で争いが起きることではないでしょうか。
「親が死ぬと兄弟仲が悪くなる」という例を、あなたも見聞きしたことがあると思います。相続がきっかけとなって、文字通り「兄弟は他人の始まり」になるケースは少なくありません。いくら事前に相続税対策を行って、財産をたくさん残しても、財産を巡って争いとなってしまっては、元も子もありません。
しかし、1通の遺言書を作成することで残された相続人同士での争いを未然に防ぐことができます。遺言は相続において最も優先されることになりますので、遺言書を作成しておけば被相続人が亡くなったあとに、被相続人の相続財産をそれぞれの相続人にどのように分配するかを指示しておくことができ、後々のトラブルを防ぐ有効な手段になります。兄弟などの親族間の争いは、他人同士の争いよりも深刻化し、醜くなりがちです。
これらの紛争の大部分が、被相続人の最終意思がはっきりしていなかったために起きています。遺言書さえあれば、多少不満があっても、故人の意思ということであきらめがつくこともあります。遺言書で、明確な意志表示をし、紛争のタネを残さないことも、残された家族に対する思いやりと言えます。
遺言書が必要となるケース
- 個人事業主の事業承継の場合
個人で事業をしている場合、その営業上の財産は法律上も個人の財産です。したがって、死亡したら相続の対象になり、それらが法定相続分により細分化することにより事業継続が不可能な事態にるおそれがあります。そのような事態に備えて、後継者に事業上の財産を相続させる旨の遺言が必要になります。 - 会社を存続させたい場合
自分が社長である同族会社を長男に後を継がせたい場合、他の兄弟も株や会社の敷地を相続すると事業に支障をきたす恐れもあります。遺言で分割を細かく指定しておけば安心できます。 - 住んでいる家と土地しかない場合
住んでいる家と土地しか財産を持っていない人が亡くなり、その財産を妻と兄弟で相続すると場合、売却して妻が住み慣れた土地を離れざるをえないような心配もでてきます。この場合、遺言により配偶者の取り分を多くしたり、親の面倒をみている長男の相続分を多く与えることで、その後の生活の安定を図ることができます。 - 特に援助したい子供がいる場合
病気や障害などハンディのあるお子さんがいらっしゃる場合は、相続分を他のお子さんより増やしてあげるよう遺言することによって、そのお子さんの将来の生活費とする事ができます。 - 子供がいないので、遺産は兄弟に分けず、すべて妻に残したい場合
遺言書なしで亡くなった場合、最ももめるケースです。配偶者に全財産を与えるという遺言を残すようにします。そうしないと、親や兄弟姉妹が相続人として加わってくることになり、特に亡夫に兄弟がいると、1/4はその兄弟が相続することになります。しかし「全財産を妻○○に与える」という遺言さえあれば、兄弟姉妹は遺留分がありませんから、すべての財産は、妻のものとなります。 - 相続人が誰もいない場合
相続人がまったくいない場合は、財産は国庫に帰属します。つまり、国のものになってしまうのです。それを望まないなら、自分が世話になった人などに譲る旨の遺言書を作成しておく必要があります。 - 先妻の子供がいて後妻と籍を入れた場合
後妻の籍をいれてすぐに夫が亡くなっても、妻は配偶者として、財産の1/2を相続をする権利がありますが、先妻の子供としては納得できないでしょう。このような場合は、当面は子供に財産が多く残るように遺言し、後妻との結婚期間が何十年も経ち、後妻にも相応の財産を残してもいいと納得がいくようになったとき、後妻に多くの財産がいくように書き換えるなどするのも良いでしょう。 - 先妻の子と後妻の子がいる場合
この場合によく起こるのが、相続発生後、先妻の子供と後妻の子供が自分の取り分を主張する紛争です。この場合においても、配分を遺言書で残しておくことである程度防ぐことができるようになります。
また、どちらの子も、同等の相続分を持ちますが、後妻の亡くなる時点が違うだけで、2人の子供の取り分は大きく異なります。たとえば、夫が死亡した時点での相続分は、後妻が1/2で、先妻の子と後妻の子は1/4ですが、後妻がその後亡くなった場合には、先妻の子は相続分がありません。先妻の子は後妻と養子縁組をしてないかぎり、先妻の子には後妻の財産の相続権がありません。遺言で2人の相続分を決めておく必要があります。 - 離婚訴訟中の妻に1/2の相続をさせたくない場合
目下協議離婚の交渉中であっても、離婚成立前に夫が亡くなれば、離婚係争中の妻が、法定相続分として1/2(他に相続人がいなければ全部)の相続ができることになります。遺言で「妻には相続させない」旨の記載があれば、遺留分だけの相続になります。 - 事実上、離縁状態になっている養子がいる場合
養子にした子と仲が悪くなり、養親の家から出てしまって、事実上離縁状態になっている場合、戸籍上離縁の手続きが終了していなければ、この養子は相続人になります。この場合も早急に離縁手続きをすると、遺言で財産をその者以外の者へ与える旨を書いておくべきです。 - 内縁関係(事実婚)の場合
事実婚の場合はどんなに長く一緒に暮らしていても法定相続人になることはできず、相続権はありませんので相続させるには遺言が必要になります。 - 未認知の子供がいる場合
愛人などとの間に子供がいて、生前にどうしても認知できない事情がある場合は遺言によって認知することができます。 - 息子の妻のために財産を残したいたい場合
息子が先になくなった以後もその妻(嫁)にずっと世話になっている。他の兄弟や姉妹はあまり面倒をみないという場合、親が死亡すると、この嫁は一銭の財産も受け取れません。息子の妻には相続権がありませんので亡くなった息子の妻に財産を残したい場合は、この息子の妻と養子縁組するか、遺言を書くことによって財産を残してあげることができます。 - 世話になった人に財産を残したい場合
相続人がいない、又はいてもあまり付き合いがない場合、身内のようにお世話をしてくれる人や、看護してくれた人に、財産を分けてあげたい場合も遺言が役に立ちます。遺言さえあれば、法定相続人でない者にも財産を与えることができます。 - 財産を渡したくない素行の悪い相続人がいる場合
相続人であっても、常日頃素行が悪かったり、経済的負担ばかりかけ、不親切で親の面倒を見ようともしなかったり、ほとんど疎遠な状態になっている相続人がいる場合。あまり財産を残したくないと思うでしょう。遺言で、その者の相続分を少なくすることも可能です。 - 相続人同士が不仲の場合
普段は仲のよい兄弟姉妹でも、相続は争族となってしまうことがありますので、相続人同士が不仲であれば、なおさら遺言で争いを防ぐようにしましょう。とくに不動産がある場合は、「公正証書遺言」にしておいた方が、あらためて「遺産分割協議書」を作成しなくてもいいので、スムーズに相続登記ができます。
遺言状の書き方
遺言は、それぞれ遺言の種類によって法律で書き方が決められています。せっかく書いた遺言書に不備があっては元も子もありません。きちんとした遺言書を作成したいのであれば、一度司法書士などの専門家にご相談することをお勧めします。
遺言作成のポイント
- 1).全文を自筆で書くこと。
- 2).縦書き、横書きは自由で、用紙の制限はありません。筆記具もボールペン、万年筆など何を使用しても構いません。
- 3).日付、氏名も自筆で記入すること。
- 4).捺印をすること。認印や拇印でも構いませんが、実印が好ましいです。
- 5).加除訂正する時は、訂正個所を明確にし、その個所に捺印の上署名すること。
公正証書遺言の書き方
- 1).証人2人以上の立会いのもとで、公証人役場へ出向くこと。
- 2).遺言者が遺言の内容を公証人に口述すること。
(聴覚・言語機能障害者は、手話通訳による申述、または筆談により口述に代えることができます。) - 3).公証人がその口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させること。
- 4).遺言者および証人が筆記の正確なことを承認したうえで、各自が署名捺印すること。
- 5).公証人がその証書を法律に定める手続きに従って作成されたものである旨を付記して、これに署名捺印すること。
承認・立会人の欠格者について
遺言執行者は証人になることが認められていますが、未成年者、推定相続人、受遺者及びその配偶者、及び直系血族は証人にはなれません。
また、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇用人も同様に証人にはなれません。
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