相続税対策について
相続税対策とは
- 相続対策とは、基本的に「相続税の節税対策」「納税資金の対策」、「争族対策」の3つの柱を中心に行う対策全体の事を言うのであり、「節税対策」のみ優先して考えると後々問題が出る場合がありますので注意が必要です。
相続税対策(相続税の節税対策)
- 相続税対策は、多くの対策を組合せ、できるだけ早めに始めることにより大きな効果が得られます。被相続人が亡くなる直前に、あわてて相続税対策を行うと失敗する可能性が非常に高く、死亡まぎわの相続税対策は税務上のリスクが大きいといえます。
- 相続税対策は、ひとつ対策の効果は小さくても、多くの対策を組み合わせれば、リスクを分散させて大きな効果を生み出すことが可能ですので、そのためにもできるだけ早めに始めることをお勧めしています。
1).生前贈与による財産の移転
- 相続税対策とは、できるだけ少ない税負担で、財産を親から子へ移すことです。 「生前贈与」にはその効果があります。相続税の節税のポイントは、贈与税の負担をいかに最小限に抑え財産を生前贈与しておくかにあるとされています。その基本は、年間1人当り110万円の贈与税の基礎控除の積極活用です。「毎年110万円の贈与なんかしてたって、金額が少なすぎて役にたたないよ」ともいわれます。贈与税は110万円までは非課税なので、110万円の贈与をなさる方が多いようですが、確かにこの金額では相続対策には不足の向きも多いかもしれませんが、仮に、配偶者と2人の子の3人に対して、それぞれ110万円を10年間にわたって贈与(「連年贈与」といいます)したとすれば、無税で3300万円までの贈与が可能となります。
ただし、こうした「連年贈与」は「定額贈与」とみなされる可能性があるので、注意が必要です。たとえば、毎年110万円ずつ贈与した場合、税務当局は「向こう10年間にわたり合計1100万円を贈与するという権利を最初の年に贈与した」とみなし、その評価額を課税対象に取り込まれ、高額の贈与税が課される恐れがあるのです。
これを回避するには、贈与する財産の内容や金額を年によって変えるなど不規則性をもたせるほか、毎年、契約書をつくって贈与する、預金口座からの資金の出し入れにするなどの方法をとり、贈与の開始時に確定した権利が発生していたとみなされないように、証拠を残す工夫をすることです。
たとえば、1年目は110万円、2年目は120万円(1万円の贈与税がかかります)、3年目は100万円、4年目は310万円……という風にします。なお、310万円贈与すると贈与税は20万円(310万円−110万円×10%(基礎控除後の贈与価格が200万円までは、贈与税の最低税率10%の適用))です。
20万円は決して少ない金額ではありませんが、200万円に対しての税率を計算すると6.5%です。相続税を支払う必要のある人は、必ず10%以上課税される部分の財産があるわけですから、相続税より贈与税の方が安くなるとも言えますので、贈与額を多くする年を設定するのも良いと思います。
2).養子縁組をして相続人を増やす
養子縁組により相続人を増やす事で基礎控除額を上げることが出来る。
例えば、遺産5億円で配偶者なしで子2人の場合には、1億3800万円の相続税がかかります。養子を1人入れて、子3人になると相続税が1億1700万円になりました。その結果、相続税を2100万円節税できます。
- 養子の数の制限
相続税の節税を防止するため、養子の数に制限があります。その制限とは、相続税の計算をする際の被相続人の養子の数を、実子がある場合には1人、実子がない場合には2人までとするものです。例えば、実子がある場合に養子が3人いても1人として相続税を計算します。なお、この制限は相続税の計算をする際にのみ適用されるものです。実際に養子縁組自体は、何人でも行なうことができます。 - 孫を養子にする場合には2割加算
孫(※代襲相続をする孫を除く)を養子にしていた場合、孫の相続税が2割加算されます。孫を養子にすれば1代とばして財産を相続させることができるので、このルールが設けられています。
3).所有財産の評価額を下げる
相続財産の評価は国税庁の「財産評価基本通達」に則って評価され、その評価された金額が相続税評価額となり相続税や贈与税の税額計算の基礎とななります。 この財産評価のしくみを利用して所有財産の評価を下げる方法としては、小規模宅地の特例や貸家建付地の評価減などがあります。
4).返済可能な借金を作る
借入金は相続税評価額から差し引きすることが出来るので、下記表のように、アパートマンション経営の為の借入金による相続税対策は大変有効な手段です。しかし、昨今は住宅の供給過剰による空室リスク等がありますので、安易な実行は避け、慎重に検討する必要があります。
項 目 | 評価額の変化 | |
アパートを建てる前 | 更地価格 2億円(仮定) | 正味財産 2億円 |
アパートを建てた後の時価 | アパート 2億円 | |
更地 2億円 | 借入金 ▲2億円 | |
合計 4億円 | 正味財産 2億円 | |
アパートを建てた後の相続税評価額 | アパート 8,400万円※1 | |
更地 1億5,800万円※2 | 借入金 ▲2億円 | |
合計 2億4,200万円 | 正味財産 4,200万円 |
※1 建築費2億円のアパートの固定資産税評価額は2億円×60%=1億2,000万円となり、更に、貸家は評価30%減となるので、アパートの評価額は1億2,000万円×70% = 8,400万円となる。
※2 アパート敷地は貸家建付け地として( 0.7 × 0.3)の評価減(借地 権割合70%として)が適用できるので、アパート敷地の評価額は2億円×(1-0.7×0.3) = 1億5,800万円となる
納税資金対策(納税資金を確保する、収入増を図る)
1).納税資金を確保する
相続財産に見合った納税資金がないとき、相続税を延納(分割払い)を申請するか、不動産などの資産を売却して現金をそろえるしかありません(物納を除く)。しかし、延納の利子税は高く、相続税をはらうために家族の生活を犠牲にさせることは忍びないところです。できることなら延納は避けたほうが賢明です。
何の対策も講じずに「何とかなるだろう」とタカをくくっていたり、「この土地は、このぐらいで売れるだろう」といった希望的な予測に基づく無理な納税計画は、相続破産を招きます。あるいは、相続分割によってあまり相続財産を分散してしまうと、本家に十分な資産が残らず、本家を維持できなくなります。
残される家族を思うのであれば、前もって納税資金を用意してあげることが大事です。
2).収入増を図る
いまある資産を活用したり、利回りが低い資産を利回りが高い資産に組み替えて、できるだけ収入を増やし、相続時に多くの現金を残すことです。「お金はいくらあっても困らない」と言いますが、特に相続が起きたときは相続財産にまとまった現金があることで、むずかしいと思われる問題が解決するケースが多くなります。
現金で相続税を納付することができれば、土地などの資産を売却せずにすみます。また長子以外の相続人にはまとまった現金を相続させることで納得してもらい、本家の資産を分散せずにすみます。つまり収入増を図ることは、納税資金対策になり、遺産争いを避けることもにもなります。
争族対策(遺産争いを避ける)
相続対策の3本柱である「相続税の対策」「納税資金の対策」「争族対策」はどれも重要ですが、その中でも特に重要なのが争族対策だと思います。いくら事前に相続税対策を行って、財産をたくさん残しても、財産を巡って争いとなってしまっては、元も子もありません。
相続が起きたときの一番悲しい出来事は、残された相続人である妻や子供たちの間で争いが起きることではないでしょうか。「親が死ぬと兄弟仲が悪くなる」という例を、あなたも見聞きしたことがあると思います。相続がきっかけとなって、文字通り「兄弟は他人の始まり」になるケースは少なくありません。
争族(遺産争い)が起こってしまうと、元の兄弟姉妹関係、親子関係に戻ることはなく、親の命日に集まることもなくなり、親の墓参りに来る子すらいなくなることも少なくありません。そんな悲しい思いはしたくないし、させたくないものです。
また遺産争いをしていると、相続人が不幸になるばかりでなく、相続税法の最大の特典である小規模宅地の評価減と配偶者の税額軽減も使えなくなり、相続税も高くなってしまいます。
争族対策としては、やはり遺言(書)の活用が最も効果がありますが、合わせて分割用財産を確保しておくなどの対策をしておくことにより、遺産分割も容易になります。分割できる財産がない時は、生命保険を活用し、生命保険金を分割財産にあてることも可能です。
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